夢中になって暮らせれば何でもいい

夢中になって暮らせれば何でもいいというのは、フィッシュマンズによる一節より。

映画『千年の一滴 だし しょうゆ』

ポレポレ東中野で『千年の一滴 だし しょうゆ』という映画を観た。この映画は単に「食」について描いているわけではなかった。様々な形の日本の「美しさ」に心を打たれる映画だった。

まず、日本列島の自然が、特に菌類に関するミクロの世界描かれていて、その様子が美しく感動する。昆布の微細な変化や本枯れ節のカビ、椎茸栽培焼畑農業における森の再生の様子が美しい。麹菌(アスペルギルス・オリザ)の力強く美しい生命力も感じずにはいられない。

そして、海、森、そしてそこに住む生命と共存する人々の「仕事」にも心を打たれる。自然を五感ないし六感で感じ取り、そして、代々伝わる伝統的な手法を守り続ける人々。自然の力を利用して旨みをひきだす昆布漁師、森と対話する椎茸の生産者、カビを極めルビー色の鰹節を作る本枯れ節の職人、蔵に住む菌と共存しする醤油職人、稲霊から麹菌を採取する杜氏、代々の種麹を守り続ける種麹屋。彼らの仕事はある意味、映画の前半にある曹洞宗の禅寺にも通づる神聖な行いのように映った。

出汁を「ひく」とは、日本の自然の中から「引き」出すことだということを感じた。それは、仏師が木の中にある仏を彫り出すのに近いのかもしれない。

日仏合作ドキュメンタリー『千年の一滴 だし しょうゆ』公式サイト